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柄谷行人さんからの手紙

2011/03/30

突然ですが、原発のことでお知らせしたいことがあります。以下のURLは、平井憲夫さんという、数々の原発の配管をやり現場監督をやっていた方の、遺言ともいえる文章(1995年)です。平井さんは退職後、原発事故調査国民会議顧問などをつとめたのち、被爆による癌で1997年に亡くなりました。

http://www.iam-t.jp/HIRAI/pageall.html

この貴重な証言を読むと、現在起こっていることが、1995年の時点でも完全に「想定」可能であったことがわかります。また、原子力発電が石油の代替物となるという考え、あるいはより環境に優しいという考えがまったく虚偽でしかないことがわかります。

核燃料廃棄物を処理するのに何百年もかかります。原発がないと経済的にやっていけないという人たちは、原発が現在だけでなく将来にわたって、大変なコストがかかることを無視しています。また、原発の作業は危険なため、本来なら高賃金をはらい、また、作業員養成のために費用をかける必要がありますが、そのようにすると経営的に成り立たない。それが成り立つのは、労働の現場がひどいからであり、また、その結果として、事故が絶えないのです。

資本は現在の利潤の確保だけを考えています。また、国家も現在のことだけ考えて、未来の人間のことを考えていない。財源に困ったら国債を発行して、未来の人たちから税を先取りするのと同じです。未来の人間は何も文句をいわないからです。たとえ今すぐ原発をやめても、未来の人たちはその処理をやりつづけなければならない。それでも、今すぐやめなければ、もっとひどいことになります。

この平井さんの「遺言」をできるだけ多くの人に配布していただきたいと思います。

柄谷行人