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iPS細胞と安田善次郎‏

朝、すごい雨もやみ、5時半から井の頭公園10キロラン。
湿気がすごい。

昨夜、左の親指の爪がそっくり剥がれた。去年の11月のつくばマラソンで痛めた爪だ。紫色から、黒ずんでしまっていたら、剥がれてしまった。
痛くはない。中からソフトシェルのような赤味の皮膚が現れた。それを触って見ると少し硬い。新しい爪になるんだ。

iPS細胞という人工的多機能幹細胞を世界で初めて人間の皮膚から作ることに成功した山中伸弥京大教授の「生命の未来を変えた男」(NHK)を読んだ。それによると、細胞と言うのは、過去にさかのぼれないと考えられていたのだそうだ。卵子だけは別だった。人間の皮膚の細胞から卵子と同じような機能を持つiPS細胞を山中さんは作った。立花隆は、細胞のタイムマシンという表現でそれを評価した。
剥がれた爪と新しく再生してきた爪を見て、iPS細胞を思った。iPS細胞は、タイムマシンに乗って過去にさかのぼることが出来る。初期化というが、こんな細胞が出来れば、私自身をそっくり作り変えて貰って、新しい人生を歩み直させてもらいたいなと剥がれた黒い爪を見て、感慨にふけってしまった。

ファンの人から「成り上がり」(PHP)を読んで、「安田善次郎翁の人物・業績および思想」(由井常彦講演録)という立派な書籍をいただいた。
そこに興味深いことが書いてあった。渋沢栄一と安田善次郎はとても仲が良く、お互いを評価しあっていたが、ある時から交流が疎遠になってしまったというのだ。
渋沢は、「論語と算盤」などを現わし経営倫理の啓蒙活動をした。世間にアピールした。それに引き換え安田はアピールなど一切しなかった。いつも自己責任、自主自力を説き、意味のない寄付はしなかった。私の「成り上がり」の中にも「慈善は陰徳をもって本とすべし、慈善をもって名誉を望むべからず」と陰徳家としての安田の一面を書いている。
そのため彼はケチ、吝嗇家と世間から批判されることがたびたびだった。
安田は悔しかっただろうが、それでも分かる人は分かると気にしないようにした。しかし、その世評に踊らされた朝日平吾に刺殺されてしまう。世の金持ちの代表として…。
その事件の際の、新聞記事の渋沢らのコメントがなんだか冷たかったのが、「成り上がり」を書く動機になった。
幕末、明治で本当の一介の庶民から日本一の商人、経済人になった安田善次郎は、もっと見直されてもいい。それが「成り上がり」の意味だ。安田がiPS細胞で蘇ったら、渋沢のようにアピール上手の人生をやり直すだろうか?否、やっぱり陰徳を積み続けるだろう。