タイの洪水に関してジェトロが以下の要望をした。98年のアジア通貨危機の際、時の小渕首相は、日系企業に緊急のODAを行い、タイ人の雇用を守った。欧米企業が撤退するなかで、日本企業は日本政府の支援でタイ人の雇用を守ったのだ。このためタイ人は日本に感謝し、それまでアメリカ製の煙草を吸っていた財界人が日本製の煙草に変えたという。
このエピソードは、私の「アジアビジネス熱風録」(文春文庫)に詳しい。
今回の要望書は、タイ政府になんとかしろと言っている。これはきっと後に禍根を残すだろう。日本企業のことは日本政府がやり、タイ人の雇用を守ってやることが、これからの長い付き合いには大事だ。タイ政府になんとかしろと言う時ではない。
インラック首相に日系被災企業の要望書を手交
2011年10月26日 バンコク事務所ジェトロ・バンコク事務所井内所長は10月25日、ドンムアン空港に設置された洪水救済対策センターにて、インラック首相と面談し、ジェトロが取りまとめた洪水対策などに関する日系企業のタイ政府への要望書を手交した。インラック首相は日本企業の信頼回復に向けて、全力で対処すると言明した。
<被災企業の雇用確保、財政支援などを要請、首相は善処を約束>
冒頭、井内所長より、インラック首相に対して、今回の洪水被害についてお見舞いを述べるとともに、現地進出日系企業などからジェトロに寄せられた洪水対策等に関するタイ政府への要望書を手交した。具体的には、冠水した工業団地の早期排水、迅速かつ正確な情報提供といった要望に加え、以下の取り組みを迅速に実施するようにインラック首相に求めた。
被災企業の雇用確保にかかる支援
被災企業が必要な機械、部品の輸入にかかる支援
被災企業の操業再開に向けた財政支援及び法人税減免
BOI恩典企業の代替生産に対する恩典継続・拡充等の柔軟な対応
さらに、将来的な治水対策の重要性を訴えるとともに、被害を受けた産業の復興への支援、協力を要請した。これに対し、インラック首相自身も日系工場が現下に直面している問題を理解しており、本要望に対して善処することを言明した。その上で、インラック首相は、現在、タイ政府が取り組み、検討している4つの点を説明し、日本の投資家の信頼維持への協力を要請した。
現在、タイ政府は洪水を取り除くべく最大限の努力をしている。
日系工場の復旧にあたっては、日本を含む海外からの専門家の協力も得て、全力で対処していきたい。今後、日系企業とも対話の場を持ちたい。
タイの専門家も工場の復旧にあたらせ、工場の復旧のみならず、物流の復旧を行うことが重要と考えている。被災企業に対応した投資委員会(BOI)の政策変更も考慮に入れている。
投資家の信頼(コンフィデンス)は重要。洪水対策については今年中に予算措置を図り、対応していきたい。また、長期的には治水対策が重要と考えている。
井内所長は、日本の投資家はタイ政府の対応を注視しており、信頼維持のためにも、全力で洪水対策にあたること、日本政府およびジェトロもタイ政府に全面的に協力する意向がある旨を伝えた。